HOME > 2016年 > 3月

Monthly Archives: 3月 2016

お客様寄稿文:写真展を開催しよう!中藤様

今回は古くからのレモン社のお客様、写真家の中藤 毅彦様からいただいた寄稿文を掲載させていただきます。
お忙しい中御寄稿いただいた事、厚く御礼申し上げます。
*********************************************************************
レモン社に通うカメラファンの中には趣味として写真作品を撮っているハイアマチュアで、いつかは自分も写真展を開催したいと思い描いている人も多い事と思います。

しかし、いくら自信作が溜まっても実際にどうしたら写真展を開催できるか見当もつかず、結局夢のままで諦めてしまう場合がほとんどかも知れません。
個人的な話になりますが、僕は写真家としてこれまで30回以上の個展を開催し、自分でも自主ギャラリー「ギャラリー・ニエプス」を運営しながら時に成功を収めたり失敗したりと様々な経験を積んで来ました。
写真展を開催したいが、あと一歩が踏み出せない・・・そんな方に僕の経験から得た写真展を開催するまでの具体的なノウハウをまとめたこの小文が参考になれば嬉しく思います。

ギャラリーニエプス

ギャラリーニエプス 四谷三丁目が最寄駅です。

まず、最初の関門として、写真展を開催する場所をどこにするかという大前提があります。
日本国内でのギャラリー事情を大まかに分けると、カメラメーカーが運営するメーカーギャラリー、プロ写真家の作品を販売する目的で運営するコマーシャルギャラリー、レンタル料を支払って会場を借りるレンタルギャラリー、写真家が自身で運営している自主ギャラリー、その他カフェや店舗の一角などが挙げられます。
この内、メーカーギャラリーとコマーシャルギャラリーは、展示をすれば観客動員数や反響は大きいものの、厳しい審査もあるので初めての個展にはハードルが高いでしょう。
また、カフェや店舗などは気軽ではあるものの展示の設備が整っていない事が多く、余りしっかりとした展示は期待出来ません。

そこで、レンタルギャラリーか自主ギャラリーから賃貸料や空き日程等の条件に合った所を選ぶ事が、最も現実的な選択になるでしょう。
いずれにしろサイト等で見るだけでなく、実際の場にこまめに展示に足を運び、好きな傾向の展示をしているギャラリーや、空間の雰囲気が自分の作風と合うと思うギャラリーを見つけて、オーナーの話をよく聞いて決める事が肝心です。
大事なのは何よりも「この場所で展示してみたい!」という情熱なのです。
その気持ちを素直に伝えて作品を持ち込んで申し込めばギャラリー側も悪く思う筈はなく、断られるという事はそう無い筈です。

無事に開催が決まったら、まずはギャラリストと打ち合わせをして詳細を決める事になります。
その際に、おそらく作品のテーマや内容について、また枚数や展示方法、DMの作成等に関して色々とアドバイスを貰える筈で、馴染みの額装や印刷業者、またデザイナーを紹介してくれる場合も多いでしょう。

展示に向けての具体的な準備としては、まず展示方法(額、パネル、ピンの直張りetc)を決めて必要な材料を手配し、スペースの見取り図を基に作品の枚数や構成を考えて展示計画をまとめる必要があります。
その際、一枚一枚の作品をしっかり見せる事は当然として、写真展の空間全体をひとつの作品と考えて、そこに通底する「テーマ」を感じさせる構成にする事が写真展成功の鍵になると思います。
その為にはタイトルやステートメントといった言葉も作品と呼応する大切な要素になってセンスを問われるので、ギャラリストとも相談しながら最大限に気を遣って決める必要があります。

額については備え付けのものが有り、マットのみは自身の負担で作成するというギャラリーが大半だと思いますが、もし無い場合はレンタルフレームの業者から借りるか自身で購入する事になり、費用もかさむので事前によく確認しておきたい所です。
また多くのお客さんに見て貰う為には、DMをデザインして印刷所に発注し、ステートメントや略歴を準備し、ギャラリーのWebサイトやカメラ雑誌の情報コーナーに送って掲載して貰うといったプレスリリースの作業も大切な準備となります。
ただし、DM等は多少腕に覚えがあっても、素人がデザインすると思わぬ情報漏れ等のミスを起こしやすいので、プロのデザイナーに依頼するかギャラリーで規定に沿って作成して貰う事をお勧めしたいと思います。
DMは遅くとも開催1ヶ月前には印刷が仕上がるように手配して、周囲に配るほか、他のギャラリーや馴染みのカメラ店を回って設置して貰うのも効果的なので、余っても枚数に余裕を持って印刷しておくのが良いでしょう。
更にSNSで展示情報を発信したり招待する事も、この時代の有効な宣伝ツールとなるので活用したいものです。

展示前日までにこうした準備が無事に進めば、晴れて搬入作業となります。
写真展の搬入は規模にもよりますが一人では中々大変なので、ギャラリーのスタッフが作業を手伝ってくれるかどうかしっかり確認しておきましょう。
特に所謂自主ギャラリーではスタッフは付かず全て作家自身の手で行わなくてはならない場合もあるので、人手が足りない場合は事前に人を手配する必要があります。
しかし、経験の無い友人ではかえって足手まといになる事もよくあるので、単に頭数が揃えば良い訳ではありません。出来れば専門の業者か写真展の搬入を経験した事のある信頼出来る人に立ち会って貰いたい所です。
ドライバーや金槌、水糸や定規、レーザー照準器、釘やねじといった道具は大抵はギャラリーに備え付けのものがあるものですが、一応確認しておきましょう。

搬入作業は、事前にシミュレーションを繰り返して並べ順や展示構成等をしっかりと計画して図面を作り、それに沿って作品を並べて釘を打つのがやり易いでしょう。
複雑な構成にすると搬入作業に手こずってしまうので、経験の無い初個展の時は凝り過ぎないシンプルな構成が良いと思いますし、かえってその方がテーマも明確に伝わりやすくなるものです。

さて、これでいよいよお待ちかねの写真展のオープンです!
ちょっとしたオープニングパーティーなどを開催すれば会場が楽しい社交の場にもなり、場も華やぐのでやってみるのも良いでしょう。
ただ、自分の経験から本格的な料理を出すのはお勧めしません。皆食べるのに夢中になって作品鑑賞がおろそかになってしまうからです(笑)

これはとても大切な事ですが、写真展の会期中は会場に出来る限り在廊してお客さんと積極的に会話を交わして欲しいと思います。
間違いなくお客さんとの会話の中から自身では気が付かなかった様々な課題に気付かされたり、また共感の言葉から作品に自信を持てたりと、沢山の成果が得られる事と思います。
逆に言うと、会場にいないで作品だけ並べていては写真展の楽しみの半分も体験できないと断言出来ます。
初個展というものは、お客さんに見て頂くのと同時に、何よりも自分自身が一番の観客となって、これまでの作品を見つめ直す良い機会なのです。

以上、大まかにではありますが具体的に個展開催までの流れをまとめてみたのですが、読んで分かる通り、相応の手間と時間と費用もかかる事でもあり、気軽に誰でも出来る事ではないかも知れません。
しかし、実際にやってみれば、その手間もまた楽しみとなる事でしょう。
晴れて自分の作品が並べられた会場に経つ充実感、お客さんに作品を見て貰う時の高揚感。
きっと病み付きになり、また写真展を開催したくなってしまうに違いありません。

是非、ほんの少しの勇気を持って写真展という新たな世界への第一歩を踏み出す事をお勧めしたいと思います。

中藤さん 

中藤毅彦
1970年生まれ。写真家、ギャラリー・ニエプス代表。
国内外で個展、グループ展多数。
写真集に「STREET  RAMBLER」(ギャラリー・ニエプス刊)
「Night  Crawler」「Sakuan,Matapaan-Hokkaido」(禅フォト刊)ほか。
第二十九回東川賞特別作家賞受賞、第二十四回林忠彦賞受賞。
清里フォトアートミュージアムにコレクション。
http://takehikonakafuji.com/ 

ニエプス地図

ギャラリーニエプスはこちら

 

お客様寄稿文:『ポートレート写真を撮ろう』山縣敏憲様

 今回は古くからのレモン社のお客様であります塾長こと山縣敏憲様からいただいた寄稿文を掲載させていただきます。
前回は「ポートレート写真を楽しもう」を掲載しました。併せてご一読下さい。
お忙しい中御寄稿いただいた事、厚く御礼申し上げます。


 

『ポートレート写真を撮ろう!

ポートレート撮影には特別なレンズが必要というわけではありません。人物を撮影するのに適するレンズをポートレート用レンズと呼んでいます。どんなレンズでも、自分の持っているレンズで撮影に工夫をして、独自の世界を作り出すのが写真撮影の楽しさでもあります。自分の好きなレンズ、撮影が楽しくなるレンズ、そしてそのレンズを使うと良い作品ができるのが一番です。

 必ずしも高価なレンズや、高性能なレンズがポートレート用レンズというわけではありません。では、どんなレンズを使えばよいのか、作品作りを前提に僕の使っているレンズで述べましょう。

 ポートレートと言っても、風景を活かして中に人物を入れる場合から、全身撮影、上半身撮影(バストアップ)、顔だけの撮影などとあり、又、撮影アングルもハイアングルからローアングルまで、女性、男性、子供と多彩です。そこでまずはモデルをどう撮影するかを考えることから始まります。(ここでは女性ポートレート撮影を例にあげました)

 一般的に言えるのは、被写体の実体を表現するのに適し、質感表現に優れ、ボケがきれいで立体感が表現できるレンズが好ましいでしょう。

 僕は普段の撮影にはニコンの24mm~70mm f2.8標準ズームレンズと80mm~400mm f4.5~5.6の望遠ズームを常用しています。

しかしポートレート撮影では300mm f2.8単焦点レンズやタンバール90mm f2.2、バリソフトロッコール85mm f2.8、キヤノンEF135mm f2.8 SOFTFOCUS、自作ベス単レンズなどというソフトフォーカスレンズも好んで使っています。

yamagata-2-1
(AF 300mm f2.8単焦点レンズと作例。大きく重くて普段は使いません)

300mmの望遠単焦点レンズなども使われますが、大きなボケがきれいではありますが、ワンパターンになりがちなので注意が必要ですね。

さて、僕が好んで使うソフトフォーカスレンズについてご紹介しましょう。

yamagata-2-2
(タンバール90mm f2.2とその例。ライカMデジで良く使います)

このレンズは木村伊兵衛さんが昭和11年に原節子さんを撮影したのでも有名になりました。ソフトフォーカスレンズの代表的レンズですね。

yamagata-2-3
(バリソフトロッコール85mm f2.8と作例。SONYのα7で使うと使い易いです)

yamagata-2-4
(自作ベス単レンズとその作例。ニコンのD800Eで使っています)

yamagata-2-5
(キヤノンEF135mm f2.8 SOFTFOCUSとその作例)

この写真は銀塩カメラでの撮影ですが、今はキヤノンのボディーが無くてお蔵入りしています。AFが使えるので使い易く秀逸なレンズです。

レンズの開放値が大きいものは被写界深度が浅くなり後ろも綺麗にボケます。80mm~135mmぐらいのポートレート用レンズと言われるものには、ボケがきれいなレンズが多くあり、顔の立体感を出せ、歪がほとんど出ないので、ポートレートに適します。またモデルさんとの距離が近すぎて、モデルさんが緊張するようなことも無く、かといって遠すぎることもなく、適度な距離がとれるのも使い易いといえます。大勢のカメラマンが集まる撮影会では、あまりモデルさんに近付かないのもマナーです。

 

さあ皆さん、楽しくポートレート撮影に挑戦してください。    山縣敏憲


 

 山縣敏憲様寄稿文

お客様寄稿文:『ポートレート写真を楽しもう』山縣敏憲様

今回は古くからのレモン社のお客様であります塾長こと山縣敏憲様からいただいた寄稿文を掲載させていただきます。
お忙しい中御寄稿いただいた事、厚く御礼申し上げます。


『ポートレート写真を楽しもう』

ポートレート写真とは、人物を中心に置いた写真のことです。全身が写っている必要は無く、顔の一部だけとか、顔が隠れていてもテーマの中心に人がある限りポートレート写真に分類されます。自分で自分を撮ったものは「セルフ・ポートレート」といいます。人物の描写というのは、古く絵画の時代からあり、モナ・リザはその代表例ですね。

ポートレート写真にはさまざまな撮影機材や撮影テクニックが駆使されます。昔は女性を撮る場合に70ミリから90ミリ前後の中望遠レンズが多く利用されたことから、このレンズのことを「お姉ちゃん用レンズ」とか「婦人科レンズ」などと言っていたこともありました。また、被写体に対してどのように光を当てるかなど、ライティングのテクニックも必要です。その中でも、とくに人物の斜め後ろから光を当てて被写体の輪郭を浮かび上がらせる手法は、光と影のコントラストが特徴的だった画家の名前にちなんで、「レンブラント・ライト」と呼ばれて有名です。しかし、後ろから光が来ると顔が暗くなりますよね。今では被写体を逆光に立たせ、被写体の後ろから来る光をレフ板で反射させて顔を明るく照らして撮る方法が一般的なようです。

ポートレート(1-1)
(被写体の背後からの光にレフ板を使って顔に当てています)

 

さて、ポートレート撮影のレンズですが、他の人と一味違った描写を求めるのは今も昔も変わりません。ボケ描写の美しさやフレアを求めて、へリヤーやニコラペルシャイドなどの古典的なポートレート用ソフトフォーカスレンズもありました。

ライカ社にもタンバール(Thambar 9cmF2.2)というソフトフォーカスレンズがありました。
ポートレート(1-2)
(タンバールとその作例)

ソフトフォーカスレンズは、キヤノンやミノルタ、ペンタックスなどからも販売されていました。
ポートレート(1-3)
(左がケンコーソフト、中央がキヨハラソフト、右が自作のベス単レンズ)

これらの作例はソニーのα7かニコンのD800Eに付けて撮影していますが、昔はソフト効果の効き目など、フィルムカメラでは直ぐに確認できなくて仕上がりが不安でしたが、デシカメはその場で確認できますから、大変楽な撮影になりました。

キヤノンにはEF 135mm f2.8 SOFTFOCUSというAF撮影が出来るレンズもあり、大変優秀な写りをします。
ポートレート(1-4)
(キヤノンEF 135mm f2.8 SOFTFOCUSと作例)

 

さあ皆さんも一度、ソフトフォーカス・レンズでポートレートに挑戦されては如何でしょうか。

 

塾長こと山縣敏憲


 山縣敏憲様寄稿文