横浜店 島です。
今回は、お散歩に持っていくのにぴったりなコンパクトなマニュアル単焦点レンズ・コシナ ZEISS Loxia 2/35をご紹介してまいりたいと思います。
ハイコントラストで発色が良い写りが私の好みにかなりドンピシャで、ブログ執筆にあたって今回はかなり楽しく撮影を楽しむことができました。
どうぞお付き合いいただければ幸いです。
【現代に蘇ったビオゴン型レンズ】
詳しい方は前面のレンズ銘「Biogon」でピンとくると思いますが、こちらはレンジファインダー全盛期の名玉、ビオゴンの名を冠した対称型レンズです。
「対称型」という光学設計は、前玉から後玉にかけて前後シンメトリーな構造になっているレンズの事。
広角レンズにありがちな歪曲収差(まっすぐのものが歪んで写る現象)が少なく、はっきりとした画に写るのが特徴です。
構造上後ろに長い形をしているためバックフォーカスが短くミラーに干渉する為、一眼レフには不向きとされたビオゴン型レンズ。
しかし、フルサイズミラーレス機の登場により、こうして現代に蘇ったというわけです。
余談ですが、コシナからはもう一つビオゴン型のレンズとしてBiogon T*2/35 ZMがライカMマウントで使用できるレンズとして先に発売されています。
しかし、このLoxiaシリーズはソニーEマウント専用のレンズとして開発されており、多少構造の違いや改良はあるそうです。
【レンズの外観、使用感】
外観はシンプルでコンパクトにまとまっています。
内側がクロス生地になっているロゴ入りの専用フードつき、鏡胴は高級感のある凹凸の無いスマートなデザイン。
口径は52mmで広角域のレンズながら引き締まったスリムな外観をしています。
ヘリコイドはかなり軽く、絞りのクリック感もかなり小刻みで操作系はかなりストレスフリーな印象。
私の友人はヤシコン プラナーの熱狂的なファンで、影響されて私も50/1.4を使っていた時期がありました。
しかし、ヤシコンのプラナーはヘリコイドに抵抗感がある感じがいまいち好みでなかったのですが、対してこのレンズはかなりスルスルとした心地よいトルク感でかなり"好み"な感触です。
比較対象としてはフォクトレンダーと近しいような滑らかさがあります。
また、このレンズのユニークな特徴として絞りリングのデクリック機能があります。
これはシネレンズ(動画撮影用レンズ)として、シームレスな絞りの開閉を行うために
絞りリングのクリック感を無くしてしまえる機能です。
今回はスチル撮影だけのレビューなのでこの機能は使わなかったのですが、地味ながらも動画撮影のことを考慮した親切な機能だなと思います。
【レンズ性能】
さて、それでは実際に撮影した写真をおみせしていきましょう。まずは絞り解放での作例です。
こちら撮って出しの写真になるのですが、ツァイスらしくかなり色つやがハッキリ出ていてコントラストが高い画になります。
色が濃ゆいので、柔らかく撮っても被写体の輪郭を切り出して捉えてくれるのが良いです。
個人的にはF2~F4くらいの撮影が描写も柔らかくて好みでした。きちんとパリッとした輪郭を出すにはF5.6ぐらいは欲しい感じでした。
逆光耐性はシャープでゴーストやフレアもなく、クリアに撮影出来ます。
ついついカラフルな景色を見るとシャッターを切ってしまいます。
絞ってパンフォーカスにした作例。
絞っていくと輪郭のシャープさが際立ってきますが、明暗のコントラストは落ち着いてきます。
四隅の歪みもなく、ちょっとざわっとくるような立体感があって解像度は高いです。
このぐらい歪みがなく、35mmという焦点距離というのはかなり優秀ではないでしょうか。
流石、ビオゴンレンズ……銘玉の噂に偽りはないようです。限界まで寄ってみました。
最短撮影距離が0.30 mと短く、かなり寄ることが出来るのでボケを活かした写真も撮る事が出来ます。
ここまで寄って撮影が出来るのはかなり嬉しいですね。
使えば使うほどに光学的な優秀さを感じて、ほれぼれしますね。これ一本あれば十分という……。
日常的に持ち歩きたくなる完成度の高さからくる安心感がこのレンズにはあります。
【ポートレートでの作例】
私の書くブログで恒例となっているポートレートの作例を交えてもっと詳しくこのレンズの性能をご紹介していきます。
作例の上手い下手はさておいて、あたたかい目で見ていただけると幸いです(ここからは参考までに細かくカメラ設定も添えていきます)
【F2.8 SS 1/800 ISO100】
多少レタッチで画がうるさかったので周辺減光させてますが、コントラストが綺麗です。
このレンズ、絞りを開けてもしっかりと黒は黒として輪郭がでるんですよね。なんというかセル画を重ねたイラストのように写る気がします。
【F2.0 SS 1/250 ISO200】
解放にするとかなり輪郭部は柔らかくなります。
オールドレンズっぽいソフトフォーカスさや玉ボケがあってこれはこれで好きな方もいるのではないでしょうか?
解放にするとソフトに絞るとパキッと切れ味を見せてくれる往年のツアイスらしい二面性の魅力があります。
しかしながら、ハイキーになっている箇所に嫌なパープルフリンジや色収差はなく、古いツアイスレンズの弱点は克服されています。
【F4 SS 1/1000 ISO100】
こちらはほぼ、撮って出しです。
F4でもこんなに背景と分離できるとは…個人的にはF4の写りが好きです。
35mmなので背景の圧縮もなく人間の目に近い奥行き感で情景を写してくれるのはありがたいです。
遠出の思い出を残すには、被写体だけじゃなく背景情報も入れ込みたいですからね。
【F8 SS 1/200 ISO320】
なんか木漏れ日で寝転んでいるとアニメのOPムービー見たいだなと思います。
この日は日差しが強かったのでF5.6~F8が一番被写体を捉えやすかったです。
こうした平面的な背景に人物を入れ込んでも四隅の写りに気がかからないのは好印象ですね。
【総評】
今回は作例多めのレビューとなりましたがいかがだったでしょうか?
個人的な季節柄の楽しみとして作例は植物の写真多めでしたが、カールツァイスのレンズのコントラストと色彩は植物撮影と相性が良い気がするのです。
使ってみた感想はとにかく、撮影していて楽しいレンズでした。
軽く扱いやすいヘリコイド・そして柔らかくも硬くも出来る描写の豊かさ……。思わず撮影しながら笑みがこぼれるそんな趣向性がありました。
ぜひ、皆さんも百聞は一見に如かず、見て触ってみて下さい。
(実はこのレンズ、横浜店のスタッフ間でもすごく良いと評判になっていました)
【おまけ】
今回は、いつもより沢山撮影したので、レビューで使わなかったお写真をNG集的に何枚か載せておきます。
四隅の歪みの無さが角張った立体を撮ると顕著に現れますね。
せっかく青空だったのに白飛びさせてしまった写真・。
ケチらずNDフィルターを用意すればよかったなあ……。
電車の中でカメラを取り出すと、周りの目がどうしても気になってしまう私です。
街中で写真撮る時、こそこそとしちゃう小心者なので……。
このブログを書いてる間に士郎正宗の世界展に行きました。
実は私にとっては大学の遠い先輩にあたる思入れある作家でもあります。
やっぱり原作の絵の草薙素子がやっぱり一番表情豊かで美人ですねー(押井アニメ版の沖浦啓之デザインはかわいいというより人形的な美形でしたから)
今度のスタジオSARUの新作アニメも楽しみですね。