Nikon ZRのすごいところ3点を解説!【ニコンプラザ大阪で見てきました】

こんにちは~。編集長 中村です。

海外で開催される大規模な放送機器の展示会にあわせて9/10(水)に様々な企業が映像関連の製品を発表し、とてつもないカオスな状況になりました。

そのなかで特に脚光を浴びたのは、"ニコン初シネマカメラ"として発表されたNikon ZR

この衝撃の新製品を実際に触って確かめるべく、今回もニコンプラザ大阪へと取材に行ってまいりました!

「で、このカメラの何が凄いんですか??」という方にも分かるよう、専門用語等を補いつつ丁寧に解説してまいりますのでどうぞお付き合いくださいませ。

■目次
【ZRの基本スペック】
【ZRのここがすごい① ニコンのカメラにREDの技術を搭載!】
【ZRのここがすごい② 音声収録機能が強力!】
【ZRのここがすごい③ ハイスペックなのにお手頃プライス】
【ニコンの”本気”が込められたカメラ】

【ZRの基本スペック】

さて、まずはこのZRの基本スペックから解説してまいりましょう。

まずイメージセンサーは有効約2450万画素の部分積層型センサーを搭載しており、2024年7月に発売されたZ6IIIと同等となっております。

画像処理エンジンもZ6IIIをはじめ最新世代の機種と同等のEXPEED 7を搭載。9種類の被写体を検出・追尾する高度な被写体検出AFも当然ながら使用可能です。
外見上の特徴としては、4インチの大型背面モニターが目立ちます。

一般的なミラーレスカメラのモニターは3インチのものが多いですが、それよりも大きいモニターが付いていることで非常に見やすい!

また、この背面モニターはアメリカの業界団体が定めたデジタルシネマ規格の広い色域・DCI-P3を100%カバーし、明るさも1000cd/㎡と非常に明るいのが特徴。

別途 外部モニターなどを装着しなくとも、備え付けのモニターだけでも十分撮影しやすいのは魅力的です!
また今回、動画撮影に重きをおいたカメラとして、ボタンレイアウトは大胆な変更が入りました!

トップカバーには「PHOTO/VIDEO」切り替えスイッチ・ズームレバー・3つのFnボタン(デフォルトでは露出補正・モード切替・ディスプレイ表示切替の割り当て)のみが配置されています。
グリップ周辺の物理ボタンも少ないシンプルな造りとなっており、マルチセレクターレバー・メニューアクセスボタン・再生ボタンのみの配置です。

主にタッチパネルから諸々の操作を行うことを前提としており、直感的に操作できるなかなか思い切りのいいUIとなっていますね~。

なお、空冷ファンは内蔵していないものの、パッシブサーマル設計のマグネシウム合金ボディーによって長時間録画にも耐えるようになっているとのこと。

フルサイズでコンパクトな動画機というのはこれまでにいくつか他メーカーから発売されていますが、だいたい放熱構造が十分でないため長時間録画は苦手なものが多い印象です。

それらと比べどれくらい熱対策が効いているのかは気になるところですので、いずれ実機をお借りして使わせていただく機会があったら試してみたいです。

【ZRのここがすごい① ニコンのカメラにREDの技術を搭載!】

さて、簡単に概要を説明いたしましたので、いよいよ「ZRのここがすごい」というポイントについて解説してまいります!

まず、何といってもこちらのZRには、2024年3月にニコンが子会社化したアメリカのシネマカメラメーカー・REDの技術がついに搭載されています!

まさか1年ちょっとで協業体制を製品に落とし込んでくるとは驚きですね……!!

このZRは、R3D NEという新たなRAW動画フォーマットをボディ内収録できるようになっています。”NE”は「Nikon Expeed」の略だそうです!
RED独自のRAW動画フォーマット・R3Dをニコンの画像処理エンジン・Expeedで収録できるように開発されたのがこのR3D NE。

本家R3D同様、REDWideGamutRGBの色空間・Log3G10のガンマカーブを採用しているため、REDのカメラと同一のワークフローでグレーディングを行うことが可能です!

……めちゃくちゃ簡単に言うと、REDのシネマカメラとZRで”記録用の動画形式”が同じ規格となったため、”視聴用の動画形式”に変えるときに同じフローで行けるようになったわけです。

ただし、本家REDのR3Dが諧調を16bitで記録できるのに対し、R3D NEは12bitでの記録となります。

とはいえ、今どきのミラーレスカメラで撮れる動画は10bitがスタンダードであり、それに比べればR3D NEは豊富な諧調情報を持っているため、十分優位性を持っていますね。
なお、センサーがZ6IIIと同じものなので6K 60pをノンクロップで記録できるほか、6Kをオーバーサンプリングして4Kでの記録にも対応しています。

RAW動画フォーマットのなかにはピクセルバイピクセルでしか記録できない(=6Kセンサーなら6Kでしか撮れない)ものが多い印象ですが、R3D NEおよびN-RAWは4Kでも記録できるのがありがたいところ。

【ZRのここがすごい② 音声収録機能が強力!】

続いて、ZRは映像だけでなく音声収録機能も充実しています! 中でも注目すべきは、ZRはカメラ本体のみで32bit float録音が可能な点です。

32bit float録音は最近だとさまざまな外部録音機器に搭載されるようになってきた機能ですが、カメラボディでこれが可能になるのは非常に画期的ですね!

いままでの一般的な24bit録音よりも「音のダイナミックレンジ」が途方もなく広く、「とてつもなく大きな音」から「とても小さい音」まで記録することが可能です。

”百聞は一見に如かず”ということで、ニコンプラザのスタッフさんが32bit float録音の凄さを実演してくださいました!

32bit float録音ON・OFFそれぞれどちらも音のゲインをめいっぱい上げて録画・録音したファイルを編集ソフトに入れてみます(左が32bit float録音・右が24bit録音)

写真を撮る時に明るい部分が「白飛び」するような感じで、どちらのクリップも「音割れ」してしまっていますが……。
なんと! 音のレベル調整してみると32bit float録音していた方のクリップはしっかり音の波形が戻ってきました!!

一方で24bit録音のファイルのほうは、写真で「白飛び」してしまった場合にデータが欠損してしまうようにバッサリ波形が切れてしまっています。

24bitでの録音だと、写真で例えると「白飛びしないギリギリを攻めて明るく撮る」ような技術が必要になりますが……。

32bit float録音だと「不意に大きな音がなって音割れしてしまった」というようなトラブルがあった場合も編集でリカバリできるので、非常にありがたいところです……!

しかも、それだけでなくZRは、Nokia社のOZO Audioを搭載することで内蔵マイクの志向性(どの方向の音を録るか)を切り替えることができます

例えばショットガンマイクのように目の前の話者の音声のみを拾ったり、撮影者モノローグ用にカメラ後方の音だけを拾うように設定することが可能です。

ただし、動画の記録形式次第ではこの機能は使えない場合もある(例えばR3D NE録画中は使用不可)のですが……。

ライトな撮影のときに、外部マイクなしでもそれなりに音の撮り方に柔軟性があるのは魅力的ですね~。
なお、ZRとともに新たなショットガンマイク・ME-D10が発表されましたが、個人的にはコイツの存在が極めてありがたいと思っています。

ケーブルなしでシューに装着するだけで使用できるだけでなく、本体から電源供給されるのでバッテリーの心配も無し。

しかも、このME-D10を装着した状態で32bit float録音も可能であり、「便利」以外の言葉が見当たらない代物ですね……!!
ただし、このショットガンマイク・ME-D10は、シューに電子接点がついたデジタルアクセサリーシューでないと使用できません。

ZRはニコンで初めてこのデジタルアクセサリーシューを採用したカメラとなっており、既存のZシリーズミラーレスカメラではこのME-D10を使用できないという点はご注意ください。

【ZRのここがすごい③ ハイスペックなのにお手頃プライス】

そんなすごいスペックのカメラってことはお高いんでしょ……?」と皆さん思われるかもしれませんが、価格設定のところもニコンさんは戦略的にうまくやっています。

同じく部分積層型センサーを搭載したZ6IIIがニコンダイレクト価格で396,000円(税込)のところ、なんとZRはニコンダイレクトで299,200円(税込)というかなりの割安価格となっています!

EVFなし・メカシャッターなしの動画特化カメラであるとしても、ボディ内でRAW動画が撮れて32bit float録音ができるカメラが30万円以下で買えるのはもはや”価格破壊”とすら言えるレベル……!!
もちろんこの価格に収めるために犠牲になった部分もあります。

記録メディアがCFexpressカード(Type B)とmicroSDというアンバランスなデュアルスロットである点や、HDMI端子が小型のType Dである点などは「割り切り」が必要です。

しかし、例えば「趣味で映像制作にチャレンジしてみたい個人クリエイター」であれば、外部アクセサリーを最小にしてこれ1台でいろいろ賄えるこのZRは極めて魅力的なカメラですね!

正直な話、わたくしとしても「2年ほど前の動画を頑張って始めたときにこのカメラがあれば……!!!」という羨望のまなざしを向けずにはいられないです。マジで。

【ニコンの”本気”が込められたカメラ】

という感じで長々と解説してまいりましたが、このZRの凄さが伝わりましたでしょうか?

実機を見てみて、「本気で映像業界に食い込んでいく」というニコンさんの覚悟が込められたカメラだと感じましたので、発売が本当に楽しみですね~!!

また実機をお借りできたら詳しく使い勝手等々をお伝えしていきたいと思います。

ただいま東京・大阪のニコンプラザでは、ZRの実機展示を行っているうえに撮影データの持ち帰りも可能となっています!

R3D NEの特性が気になる方は、ぜひプラザでデータを記録して実際にご自身の編集環境で触ってみていただければと思います!

ちなみに、Davinchi Resolveの最新アップデートでR3D NEがサポートされてファイルの読み込み・編集できるという情報が巷で流れていますね。

実際、プラザにてR3D NEがDavinchi Resolveで開けるのをスタッフさんとともにわたしも目撃したのですが……。

Davinchi Resolveの提供元であるBlackmagic Design社はまだ公式的にアナウンスをしていません

とはいえ、恐らくそう遠くないうちにR3D NEについての公式的にアナウンスがでると思いますので、動向をおとなしく見守りたいと思います~!

Nikon N-RAWの動画素材を触ってみた!【動画初心者なりに使用感をレビュー】

なお、ZRはNikon独自のRAW動画フォーマット「N-RAW」ももちろん収録できます。

わたくし動画初心者なりにN-RAWファイルを触ってみた時の感想をブログにまとめておりますので、こちらも良かったらご覧いただければと思います!

「RAW動画ってそもそもなに?」という方向けに、かみ砕いてそのメリットを解説しております~。





で、もちろん弊社ナニワグループでも各店店頭およびオンラインショップにてこちらのZR予約受付中でございます!

ZRで動画撮るぞ~!!」という気合十分の方、ぜひご予約お待ち申し上げております~!!

という感じで、だいぶ情報を端折ったのに今回も長くなってしまいましたが最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう~!

【おまけ】

ニコンプラザ大阪でZRについての解説をスタッフさんから聞いていたところ、ニコンカレッジ講師の渡邊 翔一 様に偶然お会いしました!

かつてわたしがZ30ではじめて動画撮影にチャレンジした際に渡邊さんの動画を拝見して参考にしたこともあったので、ご挨拶できて嬉しかったです~!!


動画にちょっとだけ写り込んでいる&テロップに名前載せていただきました! 光栄です!!

プラザへ取材しにいった11日時点で「Davinchi ResolveでもうR3D NEを読み込めるらしい」と噂程度には聞いていたのですが、本当に読み込めるのを自身の目で見た時は驚きました……。

このあたりの迅速な動きもニコンさんの凄いところかなと思いますので、ますますZRの発売が楽しみ~!!