横浜店 島です。
かねてよりα7シリーズを愛機として使ってきた私ですが、SONYのαシリーズは似たような名前が多くて非常に混乱します。
「S」が付いたり「R」がついたり、「α9」とか「α1」とか「7」じゃない機種がいたり……。
似たような名前でスペックが違う機種が乱立していて、初心者には商品のグレードがイメージし辛いと思います。
今回紹介するα7S IIIは、画素数を抑えた一方でノイズの発生が少なくなった、高感度での撮影に優れたα7S シリーズの機体になります。
普及機であるα7 IIIと名前は似ているのに、値段も性能もまるで違うこちらのα7S III。
発売から5年経ってもいまだに中古・新品で非常に人気がある、こちらのα7S IIIを今回はレビューしていこうと思います。
【①高感度機とは?】
まず特徴としては、イメージセンサーの「画素数」が非常に少ないこと。なんと有効約1210万画素しかありません。
その代わり、センサーが光を取り込む性能が高く、かつてない高感度・低ノイズ性能を誇る機種となっております。
上の写真はISO12800で撮影していますが、ノイズで画像がザラザラになったりディティールが消えてしまったりしていません。
撮影してみて、これには驚かされました。
ISOを大きく上げて撮影しているのにも関わらず発色やトーンは全く破綻しておらず、流石の高感度機です。
【②現行機に負けない高速スキャン】
繰り返しになりますが、α7S IIIは有効1210万画素。
動画機としては、4K収録に耐えられる最低限の画面解像度しかない本機ですが、画素数が少ないぶんセンサーの読み出しが早いというメリットがあります。
動画撮影時や電子シャッターでの写真撮影時のローリングシャッター歪みが通常よりも抑えられており、これも大きな魅力となっています。
最近では、イメージセンサーを回路部と受光部の2階建て構造にして読み出しを高速化した積層型CMOSイメージセンサーも普及しつつありますが、高い製造コストがそのぶん製品価格に跳ね返るのがネックです。
α7S IIIは、非積層型のイメージセンサー搭載機としては桁違いの読み出しスピードを誇るため、「なるべくローリングシャッター歪みを抑えて写真や動画を撮りたい!」という方には今なお有力な選択肢となっていますね。
動きのあるポートレート撮影で電子シャッターを用いても、ローリングシャッター歪みで不自然に写ることもないのは安心ですね。
また、SONYが誇るリアルタイムトラッキング・リアルタイム瞳AFもα7S IIIには搭載されており、高速・高精度のオートフォーカスで快適に撮影できました。
【③一新されたカラーサイエンス】
α7S IIIには新型画像エンジン・BIONZ XRが搭載され、従来機から色づくりが大きく刷新されています。
現行のα7シリーズではもはや定番になった「クリエイティブルック」「ピクチャープロファイル」は、このα7S IIIから採用となりました。
その魅力の一端をお見せできればと思います(拙い作例写真ですが…そこはどうか温かい目でご覧くださいね)
こちらの写真は、手軽に「シネマルック」なトーン・カラーで撮影できるS-Cinetone(ピクチャープロファイル PP11)を使って撮影しました。
撮影後に軽くカラーバランスを整えただけですが、ほとんど加工せずにここまでリッチな画になるのは魅力的です。
現場で被写体さんにすぐタブレットで写真の仕上がりを見せられる気楽さや、低画素故にメディア間の行き来もスムーズなのもメリットだと言えるでしょう。
「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」というのは踊る大捜査線 青島刑事の名セリフですが、撮影においてもそれは同じこと。
撮影現場で完結できるならそれに越したことはないわけです。
さまざまなワークフローに柔軟に対応できる万能さ、これはα7S IIIならではの利点です。
ただし、画素数が少ないため、後から画像をクロップ(切り取り)するのはちょっと厳しいです。
個人的には、構図に気をしながら撮るようになるし、自然といつもより丁寧に撮ろうという意識が芽生えるようになるのかなとは思いますが。
後からの構図調整等を前提に撮影するスタイルの方は、あらかじめご注意いただければと思います。
【総評と感想】
スチル用・動画用どちらにも活きる強みがあり、幅広いユーザーが手に取ってお使いいただけるそんな頼もしいカメラがこちらのα7S IIIです。
あえて一つだけ欠点を言うならば、画素数……でしょうか。
有効約1210万画素では、大伸ばしのプリントに使いたい方などは若干不安が残るかもしれませんが、SNS投稿やWEB掲載用にはそこまで困らない数字です。
2025年初夏現在、プロ用の機材とエントリーモデルの差に開きがある現在の新品カメラ市場において、このa7SIIIはいまだに実用的な選択肢であるかなと思います。
中古価格は、おおむね30~35万円前後で推移しています。5年前の発売といえども根強い人気のある機種です。
ぜひご検討ください。
【おまけ】
α7S IIIは、発売当初よりセンサーの総画素数が疑問視されていました。
4800万画素のイメージセンサーを、4ピクセルで1つ扱いで読み出すクアッドベイヤ―方式で1200万画素として出力しているという説があるのです。
その噂を検証したネット記事も存在しています。
もちろん、ソニー公式が認めているわけではないし、メーカーの技術情報は企業秘密でしょうから、あくまでも”一説”に過ぎないわけですが……。
もしそれが事実ならば、低画素・高感度の撮影モードと高画素・低感度の撮影モードを切り替えられるカメラとしてリリースしてくれたら、さらにマルチに使えるカメラだったのになぁと思います。